短歌日記 24.12.16-24.12.22

火守りのつれづれ
12/16

糸となる平均台は先細り
掘り出した剣おそれを酔わす

夜、「今日どうだった?」と妻に訊かれて、意識にひっかかる出来事や実感がなにもない事実。

年々歩ける道幅が狭くなる。この先に「こうとしか生きられない」があるのだろうか。

12/17

惑星の頭上で僕らせせらぎを投げあい溶かしカクテル飲むの

友人とラーメン屋に行き、そのままカフェで閉店まで。互いに互いの濃縮された100%を渡しあう感覚が、とても心地よい。

ボールを投げようと思えることの幸せ。応答はひとりではできない。

12/18

揺らいでる毛布もろとも砕くから
まだよく食べて よく寝ていてね

いい場に参加して楽しむ反面、粗を探して自分を優位に置こうとしていることに気付く。敵だと認定してしまう。ちんけなプライドは要らない。プライドはもっと大切な、根底にあるものだろう。

12/19

オセロ盤ひっくり返す澄まし顔
我が身可愛さプライド被る

周りの人が全員、俺に都合よくあって欲しいと思っている。そうしないと壊れそうだったんだろう。

12/20

存在を軽んじられる午後二時が延々つづく世界よここは

久し振りにしんどさで起きれず。「存在を軽んじられている」と思うと、布団から出られなくなる。布団のなかで、自分を薄く薄くしようとする。

12/21

片手におさまる寝息よ飛んでいけ
なくなることはつづいていくこと

寝れなかった昨夜。自分を傷つけることで、なにが回復しているのか。

NHKの配信で「ぼくは しんだ じぶんで しんだ 谷川俊太郎と死の絵本」を観た。子どもの自死をテーマにした絵本。

このあいだ、谷川さんの「孤独は前提」ということばを友人が教えてくれていた。

今日、腕のなかで眠るお子の寝顔を見て、かなしくなった。

ことばにしたくないいまの気持ちを、抱えつづけていたい。

12/22

あの冬にこぼした夢が拾われて
咲いたと知った僕は病床

お笑いの賞レースを観る。内容はもちろん、優勝者、敗退者の顔が焼き付く。俺があんな顔をしたのは、いつが最後だろう。

「安久都って意外とアツいよね」と友達に何度も言われた。ここ数年、この“アツさ”とやらを上手く追いかけられていない。

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