短歌日記 24.12.23-24.12.31

火守りのつれづれ
12/23

彼があのビデオテープを伸ばす人
元素になれるのもあと二回

妻の四連勤最後の日。お子とのふたり時間も四日目。いったん軽い区切りになるからなのか、心持ちも安定。

数年前、冒頭に惹き込まれず置いていた本を手に取り、読み直す。

ずっと同じままつづくなんて、ないんだよな。

12/24

「声出していいの?」と怯える男の子
君があなたを幾層にもする

行事を大切にする妻なので、クリスマスイブではしゃいでいる。ローストポークをつくったり、カフェで買ってきたケーキを食べたり。

日付なんて、勝手に決められたもの。特別な一日を、“特別”にさせているものとはなんなのだろう。

12/25

残り火を塗りつぶしては灰を掻く
「やればできる」が嫌いだったな

活力が見当たらない昼間。いつもどこかでガス欠になる。燃え尽きないよう、薪をくべつづけることは健全なのか。

とはいえ、燃やそうとしないと灰のまま。すぐに鎮火され、明暗の差にぐらっとする。

12/26

明日ぼく器になるんだ
そしたらあんな言い訳しなくていいの

ずっと、「つまらないものを書いた」と感じることが怖い。言葉を書けなくなるときも多々ある。

今日もその感覚で動けなかった。まやかしの可能性のなかに、まだ生きていたいのか。緩慢に過ごすのは、言い訳が欲しいから。

12/27

石を積むふりで日記を埋めるから
ちやほやする鳩に友がなる

とある選択をしようとするも、そこには我が身可愛さや近視的な視点しかなく、大切なものを削ろうとしていたことに気付く。

12/28

調味料を足しつづける
後戻りできる勇気を僕にください

冷凍していたキャベツで味噌汁をつくるも、ぶよぶよした食感が気に食わず。

「自意識のこじらせ」についてはなしていたポッドキャスト配信を聴きながら、お子と遊ぶ。

たくさん遊んだからか、お子がお腹のうえで熟睡。降りてくれなかったので、耳だけで友人たちとの会へ。

夜も友人と2時間半ほどはなす。たくさんの出会いで、嬉しい時間が増えてきていることは忘れずに。

12/29

霜を踏み抜きぐちゃぐちゃを傷に塗るのは迷子だと気づきたいから

久し振りに朝歩く。BGMは宇多田ヒカル。夜明けの空と相まって、浮遊している感覚になる。

「衝動」についてのポッドキャスト配信を聞きながら、お子と遊ぶ。お昼寝中は、友人から勧められた映画「わたしは、最悪。」を。残り20分のタイミングでお子が起床。

夜、寝てくれたお子を妻に託して近所のカフェへ。荒井裕樹さんの『生きていく絵』を読む。

12/30

首筋を愛する指は引き金にも触れていること覚えていて

寝不足。妻を仕事場に送って、お子とふたり近所のイオンや公園へ。動いてくれないお子に「先に行っちゃうよ」と言いそうになった自分に怯える。

とあることで感じた苛々を妻に横流ししてしまった。そんな自分にも苛つく。

友人からのメッセージで、しらずしらずのうちに助けになっていたことを知る。

12/31

飲み込んだ鉛で地べたへ近づけど
溶けた心は青々している

昨日からご両親がきてくれて、三世代で過ごす。妻がおあげさんをたいてくれた。めんつゆからそばつゆをつくり、年越しそばを。海老天も乗せちゃったりして。

僕を取り巻く諸々は、心から幸せだ。
でも、心からしんどくもなる。

お子のお昼寝中、PrimeVideoで『怪物』を観ていた。

自分のしんどさは「しんどさ」と言えるほどのものじゃない、と感じることが多々ある。幸せだから。

きっと、どちらかではない。どちらもある。その両方を受け止めたい。

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