ちいさな火に手をかざしあうための出版活動をはじめます

火守りのつれづれ

近しい友人たちには妄想をはなしていたのですが、えいやと出版活動を形にしていかなくては…と、ようやく動きはじめました。その流れを流しつづけるためにも、日誌のようなものを綴っていこうと思います。今回は、「はじめに」のような文章です。

<自己紹介>
安久都智史/Satoshi Akutsu
1995年関西生まれ。Webメディアの編集長などを経て、2023年に誰かと一緒に迷いつづけるための活動「とろ火」をはじめる。死生観をたずね歩いて記録したり、読書会をしたり、短歌を詠んだり、夜明けを散歩したり。動いている水と雲に惹かれる。妻と息子がだいすきです。

延命行為として、本をつくっていきたい

冒頭に書いたよう、「形にしていかなくては」という感覚を抱くようになり、動きはじめた活動。それは焦りなどというより、「もうこの道しか選べないのでは」といった感覚です。

いろんなところで書いたりはなしたりしていますが、僕は2019年の社会人2年目のとき、うつ病を発症しました。過度なストレスというよりは、「なんのために働くのか」「そんなこと言ってないで頑張らないとダメだ」が等しく大きくなり、なにかが破裂して倒れたような気がします。

そこから2度の休職を経て、いまはフリーランスとしてなんとか生きているものの、いまも“働く”がなんだかしっくりきていません。

その根っこには、そもそも“生きていく”がよくわかっていない感覚があります。悲嘆に暮れるのではなく、なんで生きているんだろう…と呆然としてしまう。

そんな僕が「あぁ、いいなぁ」と思えるのは、誰かと一緒に悩んでいる時間でした。働くうえでのしんどさ、いろんなことへのモヤモヤ、生きるってなんなんだ…などをぐるぐると友達とはなしながら考える。いろんな都合で離れてしまいましたが、インタビューメディアの編集長をさせてもらっていたことで、その片鱗を感じられたように思います。

ぐるぐるとしているあいだは、誰かのまんなかにあるもの、僕自身のまんなかにあるものにふれる時間で。ぐにゃりと動きつづける、けれどその瞬間はたしかにある輪郭にふれることで、僕は“生きている”を握りしめていた気がする。そんなことを考え、読書会や死生のはなしを語り合う場などを、「とろ火」という名前で開くようになりました。

そして、まんなかに触れる感覚を強く抱いたのは、この夏に友達とふたりでZINEをつくったとき。「心のなかの触れたくない部分」をテーマに、僕は短歌を、友達は日記を書いていました。

この制作期間が、とてもいい時間で。誰かと一緒に考え、悩み、はなし、つくっていく。そんな営みを繋いでいけば、生きていける気がしました。

僕にとっての、ある種の延命行為。その行為を無理のない範囲で、手渡しするように、誰かへと伝えて命綱のような細い糸を増やしていけたなら。

そんなことを感じ、出版活動を考えるようになりました。

ひとり/ふたり出版活動

これはまたどこかで言葉にすると思いますが、「じゃあ俺はひとり出版社を立ち上げるってことか…?」とぼんやり考えていても、あまりしっくりこない感覚があって。良いのか悪いのか「本をつくって食っていくんだ」という気概も体力もない。それよりは、「本を誰かと一緒につくっていく」という流れそのものに身を浸しつづけていたい。

ただの言葉の綾かもしれませんが、そんなぼんやりとイメージを大切にしたくて、「出版活動」といったん呼んでいます。

そして、たしかにこの活動を走りはじめたのは僕ひとりなんですが、その傍らには誰かが必要になる。ひとりだけど、ひとりではなく、誰かと一緒につくることに意味がある。

結果、とりあえずは、「ひとり/ふたり出版活動」というちょっと変な名前で考えてみようと思います。

ちいさな火に手をかざしあう

繰り返しになりますが、つくろうとしているのは、誰かと一緒に考え、悩み、はなし、つくっていく本。

僕とその人のあいだにある大切なテーマを、他の誰かの声も聞かせてもらいながら、一緒に考えていくような本です。この制作の過程で、僕とその人のまんなかにあるものが濃くなるような、そして、そのテーマと向き合った跡を届けることで、誰かのまんなかも浮かび上がってくるような本。

いろんな人とのあいだを見つめて、つくっていけたらいいな。

これはシリーズのような本になるのでしょうか。「ちいさな火に手をかざしあう」という名前だけは決めました。

つくる人も、聞かせてもらった人も、読む人も、まんなかにある小さな火を守りあっていけたら。そう願っています。

整理のために仮でつくった資料より。
日誌として書いていくこと

つらつらと書いてきましたが、従来の体力のなさと、しんどさによって、思考も行動も進まなくなることが多くあります。それでも、延命行為をつづけていきたい。

だからこそ、考えていくきっかけや、動いてみた証として、日誌のようなものをつけてみることにしました。

加えて、出版活動をしようとしてきた方々が、いろんな記録を残してくれていることも大きな理由。さまざま参考にさせてもらっていますし、読めば読むほど、それぞれの考え方や動き方があるんだなと思います。だったら、僕なりの試行錯誤が、誰かのヒントになることもあるのだろうなと。
(試行錯誤を残しておくことで、誰かを頼ろうとしたときに頼りやすくなりそう…という実利的な考えもあります)

活動の規模、お金、印刷、流通、活動で大事にしたいこと、デザイン、作戦会議の内容、発行をゴールにしたくないこと…などなど、書いて考えたいこと、考えた内容を記録したいことは山積みです。

途中にも記しましたが、この出版活動が僕を含めた人たちの延命行為になるように。考えて、悩んで、書いて、はなして、少しずつ動いていけたらと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。


とろ火書房 安久都智史
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